広報にほんまつNo.135
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4広報にほんまつ 2017.2身近な職人は父だった 稔貴さんが石垣島でホテルの仕事を始めてから約2年半、厨房のシェフやホールで働くホテルマンたちのプロとしての仕事ぶりを見ているうち、いつしか『プロ(職人)』というものに憧れを抱くようになります。そんなときに頭に浮かんだのが、父の仕事である「削蹄師」という職人でした。それはくしくも、子どものころ絶対になりたくないと思っていた職業でした。牛を知るための厳しい修業の日々 削蹄師になることを決めた稔貴さんは、父の下で基本技術を学んだ後、日本一厳しいといわれる北海道の師匠の下で約2年間の修行を積みます。 もともと牛を怖がっていたため、修行に出る前は、稔貴さんが近寄るだけで牛が騒ぎ、父からは「仕事の邪魔になるから下がって見ていろ」と怒鳴られていたそうです。牛は非常に神経質で憶病な動物のため、人間の気持ちが伝わってしまうのです。削蹄技術は蹄を切るのみにあらず 基本的には一人で1頭の牛の削蹄をするこの仕事。800キロ近い体重の牛の脚を一人で持ち上げ作業するのは、常に危険と隣り合わせです。そこで大事になるのは、いかに牛をおとなしい状態のまま削蹄できるかです。削蹄をする際、牛への近づき方や牛のどこを触っているかといった微妙なコツもありますが、一番大事なのは削蹄師の感性(オーラのようなもの)。普通の人では手に負えない暴れている牛に、この感性をもった削蹄師が近づくと、一瞬にしておとなしくなることもあるそうです。父・靖雄さんいわく、昔は怖がってはいたものの、息子・稔貴さんにはこの感性が備わっていると話します。けがをさせない、しない 武藤さん親子に、この仕事で一番気を付けていることを聞くと、「牛にけがをさせないこと。そして自分たちもけがをしないこと。」だといいます。そのためには、常に目と耳を集中させて、牛にけがをさせないように削蹄をしながら、少しでも周りで異音がすれば、すぐに別の牛の削蹄をする人を助けに行けるようにしているそうです。取材に伺った時に牛舎が異様に静かだったのはそのせいだったのです。③蹄を接地させたまま、伸びた外周部分を専用のナタで切り落とす②蹄の形や疾病などをチェックし、マークシートに記入①削蹄前に牛を歩かせ、牛の立ち方や歩き方などをチェック④削蹄で一番大事なのがこの「脚挙げ」。牛にストレスがかからないようにしないと、牛は脚を挙げてくれない⑤専用の鎌で、蹄の裏側を削切⑥最後に蹄の外周にヤスリを掛けて完成。全国大会では1人で4本の蹄を40分以内に削蹄します▲上は削蹄前と削蹄後の蹄。下は削蹄に使用する主な道具牛削蹄競技大会の主な流れ ※ ①から⑥の順 ⇒

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