広報にほんまつNo.152
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5Nihonmatsu City Public Relations, 2018.7, Japan武器の差が勝敗を決す名 称形 態有効射程距離(m)命中率発射速度現在の大体の換算価格前装と後装の違い銃1挺当たり弾丸1発当たり奥羽越列藩同盟諸藩が主に使用した銃(1)ゲベール前装滑腔式80~100悪いきわめて遅い約100万円自分たちで製造前装は弾丸を銃口から入れる。この際、銃身を真っすぐに立てなければならない。弾を発射するまで10以上の操作があり、ややこしすぎる。(2)ミニエー前装施条式300~500良い遅い約500万円約7千円新政府軍が主に使用した銃(3)スナイドル後装施条式600~800良い早い約1000万円約1万円後装は現在のライフル銃のように、弾丸を銃尾の弾倉を開けて装填し弾き金を引くだけなので、初心者でも簡単に操作ができる。(4)スペンサー後装施条連発式300~500良いきわめて早い約2000万円約1万円奥羽越列藩同盟諸藩と新政府軍の戦力の差を如実に比較できる戦いがありました。慶應4(1868)年5月25日、白河の北東部で行われた「本沼の戦い」です。新政府軍は、敵の状況を偵察する斥せっ候こう部隊20人、これに対し同盟側は、二本松藩と会津藩の合わせて200人の兵力でした。お互いに1時間ほど銃を撃ち合った結果、新政府軍側の損害が死者1人、傷者1人に対し、二本松藩は傷者1人、会津藩は死傷合わせて15、6人(『復古記』より)を出し、同盟側が先に撤退します。同盟側は10倍もの兵力を擁しながら、結果として新政府軍の優勢勝ちのようなものとなりました。このように、戊辰戦争全般において勝敗を決したのは、戦闘で使用された武器の性能の差によるものが大きかったようです。戊辰戦争の主武器は小銃と軽砲。ここではこのうち、小銃の性能の差について、簡単に紹介します。戊辰戦争で使用された主な小銃の種類とその性能比較★(1)ゲベールの形態である滑かっ腔こう式しきとは、銃身の中の弾丸が通る部分(以下「腔内弾道」という)が滑らかな円筒状になっているものをいう。銃口から弾丸を入れるため、当然入れる弾丸は銃口径より小さいものでなければならない。よって発射されても、弾丸が腔内弾道を上下左右にガタガタ揺れ動いたりしながら銃口から飛び出すため、標的が遠いほどズレが発生し、狙った所へは命中しずらかった。★(2)~(4)の形態である施せ条じょう式しきとは、腔内弾道の中に人工的にらせん状のミゾをつけたものをいう。ミゾがあることにより、(1)の滑腔式に比べ、命中率と飛距離が格段に向上することとなる。(以下にその理由を記載)  ・弾丸はミゾに食い込んだままのかたちで腔内弾道を通るため、銃の中心線からずれずに発射され、命中率が格段に向上する。  ・腔内弾道のミゾにより、弾丸にもらせん状のキズがつくことで、銃口から発射されてからの飛翔中の弾丸の周りの空気層に小さな乱流群が発生し、より大きな浮力が得られる。  ・腔内弾道のミゾに沿って回転しながら弾丸が発射されるため、弾丸に揚力が得られ、飛距離もはるかに長くなる。滑腔式での無回転のときと比べると、飛距離は2~3倍となり、現在のゴルフボール表面のくぼみも、この理由により付けられている。奥羽越列藩同盟諸藩は、主に上の表の(1)と(2)の前装式銃で戦いに挑みました。新政府軍が使用した後装式の銃は、戦場で寝たままでも弾の装そう填てんが可能だったのに対し、同盟諸藩が使用した前装式銃は、長い銃身(1.3~1.5m)を垂直にしなければ弾丸を詰め込むことができません。つまりこのことは、銃を撃つ人が弾を装填する際、立ち上がらなければならないことを意味します。 弾丸が乱れ飛ぶ戦場で立ち上がるということは、自殺行為です。立ち上がった瞬間に敵軍に狙い撃たれてしまうからです。よって前装式銃を使用する兵士たちは、様子を見ながら伏せたまま後退し、木陰などの手頃な遮しゃ蔽へい物ぶつまで行って弾丸を装填しました。銃の性能の差、そして銃を撃つまでに要する時間の差が、同盟諸藩にとっては致命的となりました。【参考図書】数学者が見た二本松戦争(渡部由輝 著、並木書房 発行)劣優

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