種別
有形文化財 工芸品
指定年月日
平成21年6月1日
所在地
二本松市百目木字町215
所有者(管理団体)
渡辺善弘
概要
江戸後期の浮世絵師歌川(安藤)広重が描いた「陸奥安達百目木驛八景圖」の大判3枚続きの版木で、材質は桜材である。
墨版、色版ともに右・中・左の3枚に分かれていて、墨版の版木は片面のみの使用で各1枚ずつの3枚、色版の版木は両面使用で各3枚ずつの9枚あり、合計12枚が残されている。なお、近年の調査で各2色分の版木が足りないことが判明し、1組3枚を復刻している。
大きさは概ね均一しており、縦が39.0cm~40.0cm、横が26.0cm~27.0cm、厚さは墨版が2.3cm~2.5cm、色版が2.0cm~2.2cmを測る。
広重は、弘化2年(1845年)あるいは3年頃、旧二本松領内百目木村の名主を兼ねていた富商・豪農の酒造屋渡辺半右衛門家に1か月ほど滞在し、半右衛門の依頼に応じて百目木八景を制作した。画面中央には渡辺家の屋敷を大きく描き、周囲の社寺や名勝とともに、八景の名称を表記した小さな短冊型を配している。
八景は、「渡辺せいらん(渡辺晴嵐)」・「弥来せきしやう(弥来夕照)」・「百々川のほたる(百々川(ももせ)の蛍)」「舘山の一ツ枩(舘山の一つ松)」・「こくう蔵ばんしやう(虚空蔵晩鐘)」・「坪石の秋の月」・「沖田のさうとめ(沖田の早乙女)」・「羽山の暮雪」である。
このように、当時の百目木村の自然と歴史を広重らしく巧みに表現しており、広重が描いた浮世絵の版木が依頼主である渡辺家に保存・継承されていることは非常に価値が高く、さらに当地域と江戸文化との交流を示す貴重な資料である。