令和2年の二本松の菊人形は開催を見送り、二本松菊花品評大会を中心に「霞ヶ城公園菊花展」を開催しました。
今回、開催前から菊の開花まで「二本松菊花愛好会」遊佐美徳会長を取材しました。
遊佐さんは菊栽培を始めて37年。中でも、1本の茎から千もの花を咲かせる「千輪咲」の栽培を始めて10年になります。
3色の花の千輪咲で、2016年日本菊花全国大会「特作花壇の部」内閣総理大臣賞を受賞し日本一になりました。
菊栽培を始めたきっかけは、二本松市の花である菊に興味を持ち、菊で市内外の人たちに感動を与えたいと思ったからだそうです。
9月16日にお伺いした時点では、「三輪盆養(1本の茎から3本の枝を伸ばし3つの花を咲かせる)」は花のつぼみがつき始め、「肥料抜き」と呼ばれる土から肥料分を抜く作業をしたところでした。
生育状況は今年も順調とのこと。つぼみが大きくなるのが楽しみです。
10月13日には、千輪咲に輪台(りんだい)という菊花の台の取り付けをしていました。
妻・誓子さんと愛好会副会長・伊東勝夫さんも手伝い、前日から取り付けを始め、3日間で仕上げます。
輪台へ菊花を配置する際、バランス良く配置するのが難しく、また、枝分かれしている部分は、少し引っ張っただけでもすぐ折れてしまうので、細心の注意を払いながら行います。
菊花を支える輪台のパーツは、以前は溶接をして手作りしていましたが、現在は代用品を使用したり、鉢は回転させることができ、手入れをしやすくしたりと工夫しています。
前年の4月にさし芽から始め、摘心(実や花を大きくするために、新しく伸びてくる茎・枝を途中でつみ取ること)を何度も繰り返し、枝分かれさせ大きくしてきました。
8月から翌年4月まで、夜間は照明の光を当て、開花時期を遅らせます。
冬季も5度を下回らないようにし、夏は西日を避けるよう注意するなど温度管理も行います。そうして咲いた菊の花は1カ月半ほど開花します。
栽培する上で一番重要なのは根で、水の管理がとても難しく、根腐れや枝枯れしてしまうことが多いそうです。
日本一になったこともあるベテランの遊佐さんでも、水の管理や病気・害虫などにより、今でも苦労するほど、千輪咲の栽培は難しいものです。その難しさから、二本松でも千輪咲を栽培しているのは現在4人だけです。
国内の他の地域でも菊の多輪咲の栽培は行われていますが、1本の茎から直径2.5mを超え千輪以上の花をつける「千輪咲」は、日本でも二本松だけです。
たくさんの手をかけ、丁寧に育てられる千輪咲。作り手の思いを感じながら見ることで、より感動することでしょう。