種別
有形文化財 絵画
指定年月日
平成9年7月1日
所在地
二本松市成田町1-532
所有者(管理団体)
大隣寺
概要
これらの画像は、江戸期において二本松藩主であった丹羽氏の菩提寺である大隣寺の御霊屋の主尊として安置されたもので、丹羽家の初代長秀から、2代長重、旧二本松藩主となった3代光重、4代長次、5代長之、6代秀延、7代高寛、8代高庸、9代長貴、10代長祥、11代長富と、丹羽氏11代の画像12幅が伝えられている(2代長重の甲冑画像を含み、12代長国、13代長裕を欠く)。
2代長重甲冑画像以外は全て二等辺三角形的構図の座像で、鎌倉時代の源頼朝像などに見られる肖像画の形式に概ね準拠した形で描かれ、安定感のある姿にまとめられている。
中でも、3代光重、4代長次、5代長之、7代高寛、8代高庸画像はいずれも両肩を鋭角に張り上げ、威厳を強調した表現がみられる。また、台座の表現にも変化が見られ、初代長秀、2代長重、3代光重、4代長次、9代長貴画像が前後辺平行な水平線のみで表されるのに対し、6代秀延、10代長祥画像はさらに左右の辺が表現されて平行四辺形をなし、奥行きの表現がみられる。なお、7代高寛画像は後辺のみ、5代長之、8代高庸画像は台座を表現せず、11代長富画像は台座の代わりに座布団風のものを用いているのが特徴的である。
画像は全て鉄線描法によるものであるが、11代長富画像だけは線に微妙な変化を持たせ、特に袴などに見られる柔らかで流れるような線は、質感・量感をも表現する優れた効果が感じとられる。また、彩色においては顔に明暗をつけ立体感をもたせるといった渡辺崋山らに見られる西洋画風の技法が取り入れられ、さらに谷文晃に見られるような、顔や手の細部が細やかな線描彩色で仕上げられ、熟達した画家の筆によるものと思われる。
顔の彩色は6代秀延画像にも見られるが、他は東洋画特有の平塗りである。しかし、その表現描写はそれぞれ非常に個性的表現がうかがわれる。
なお、3代光重画像は狩野常信の筆によるもので、光重が深く帰依していた雲堂天岳上人の賛があり、12幅中最大の規格を測り、まとまりのある画風を呈する。また、4代長次画像には元禄12年(1699年)9月の当寺8世魯山存策の賛があり、特に表情や手の構えに風格が感じられる作品である。
美術的価値はもとより、藩主の歴代画像が菩提寺に承継保存されていることは、歴史的意義も深く、貴重である。
番号 | 名称 | 作者 | 形状 | 規格 (縦×横cm) |
年代 | 参考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 丹羽長秀画像 | 絹本・著色・軸装 | 80cm×37cm | (江戸) | ||
2 | 丹羽長重画像 | 絹本・著色・軸装 | 80.5cm×38.5cm | (江戸) | ||
3 | 丹羽長重甲冑画像 | 紙本・著色・軸装 | 122cm×49cm | (江戸) | ||
4 | 丹羽光重画像 | 狩野常信 | 紙本・著色・軸装 | 127.5cm×59.5cm | (江戸) | 雲堂天岳賛 |
5 | 丹羽長次画像 | 絹本・著色・軸装 | 100cm×45.5cm | 元禄12 | 大隣寺8世魯山存策賛 | |
6 | 丹羽長之画像 | 紙本・著色・軸装 | 89cm×30cm | (江戸) | ||
7 | 丹羽秀延画像 | 絹本・著色・軸装 | 89.5cm×33.5cm | (江戸) | ||
8 | 丹羽高寛画像 | 絹本・著色・軸装 | 76.5cm×42cm | (江戸) | ||
9 | 丹羽高庸画像 | 紙本・著色・軸装 | 89.5cm×30cm | (江戸) | ||
10 | 丹羽長貴画像 | 絹本・著色・軸装 | 80cm×44.5cm | (江戸) | ||
11 | 丹羽長祥画像 | 絹本・著色・軸装 | 79cm×34.5cm | (江戸) | ||
12 | 丹羽長富画像 | 絹本・著色・軸装 | 65cm×31cm | (江戸) |